秋桜
11月のはじめ。
私たちはコスモス畑に行った。
気持ちのいい小春日和だった。数えきれないくらいの花にかこまれていると、私たちはとても幸福で、そしてちっぽけな存在だった。
彼らは太陽をたくさんあびて、今を生きることに最大の喜びや快楽を味わっていた。そして、美しかった。
よくみると彼らの中に、まっちゃっちゃになった枯れた花もいた。
生きることを謳歌する花と短い生涯を終えようとしている花。彼らは表裏一体で、どちらも美しくて、そして危うかった。
私たちも彼らと同じく光をあび、風を感じ、ほほえんだ。
そこに時間という概念や、私たちを縛るものは無く、恐ろしく満ち足りた気持ちで、今ここを生きていてた。
とても美しくて、とても危うい。大きくて、ちっぽけな存在。
コスモス畑での秋は、束の間の幸福を私たちに与えてくださった。