いぬになりたい
だんだん寒くなってきた。
たしか、夏の積乱雲がほろほろになって、うろこ雲になった。
金木犀のあまい匂いがしたかと思ったら、落ち葉拾いのおじさんをみかけるようになった。
日の出の時間はゆっくりになるのに、眠る時間はおなじだから、目覚ましがなっても外がまだ暗くておかしな感覚になる。
ついこの間、1限の授業に間に合うバスを降りた時、吐く息が真っ白になって、もうこんな季節?と思ってびっくりしちゃった。
夏のフィルムカメラを現像したり、すだちのジュースを飲んだり、山で栗を拾ったり、コスモス畑に行ったり、ラフランスを少しかじったりしたわたしの秋はどこへいった?
秋は、夏の終わりがつけた傷の余韻を味わって、確かにくる冬への準備をする大事な季節。
コフレやクリスマスソングやおせちのびらをみて冬を感じるのはいやだ。
いつもと少し違うズレのようなものを季節の変化だと感じながら暮らして生きたい。
いぬは、人間よりよっぽど耳や鼻がきくから季節に敏感だと思う。いぬは数字を知らないけど、きっと彼らなりの時間軸が存在して、わたしにはそれが真似できないものだから、それがとてもとてもうらやましい。
わん!とないて、いぬになりたい。